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地域連携ステーション フミコム

活動報告・発行広報物

【開催報告】第47回フミコムcafe「ふだんの協働がまちを支える -災害時に官民協働のネットワークで取り組んだ岡山の実践から-」

地域連携ステーション フミコム
  • 文京区全域
  • 福祉・健康(高齢者/障害者/その他)
  • まちづくり・安全
  • その他
日 時:2020年2月21日(金)18:30~20:30
会 場:フミコム 交流スペース
ゲスト:石原 達也さん(岡山NPOセンター代表理事ほか)
※新型コロナウィルス感染拡大防止のため、オンライン配信限定で開催
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第47回フミコムcaféは新型コロナウィルス感染拡大予防のため、初のオンライン限定での開催となりました。


地元岡山で7つ、全国的な組織でも7つの肩書を持つ石原さん。
自らのことを、「仕組み屋」「社会事業家」「社会編集者」とも称しています。

さて、2018年7月に岡山、広島、愛媛などで発生した豪雨災害。
大雨で被害が出だした初日の夜から、支援を求める声や、支援をし始めている人の様子などの情報が入りはじめ、翌日には県域での「災害支援のネットワーク」を立ち上げようと決めて就寝したという石原さん。翌日に岡山県社会福祉協議会とネットワーク立ち上げの合意をし、その他もろもろの支援に向けた調整を行っていきました。
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災害時の支援は、大きく分けると
・被災家屋に関する支援
・家屋が被災し避難所/仮設住宅/復興支援住宅に入っている被災者の支援
・被災された方のうち高齢、障害、外国人、性的マイノリティなど要配慮者支援
・避難所等を利用していない在宅避難者の支援
・生業・仕事の支援
に分類でき、

炊き出し・食事の提供から、医療・看護などの専門的サービス、外国人支援など様々な支援を行う180を超える団体がネットワークに参加して活動を行っていたとのことです。
(このネットワークは同年10月に民官連携の常設ネットワークとして再設立されています。)
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困っている方もたくさんいる、一方で困っている方のために活動したいと思っている方もたくさんいる。そんな中で「中間支援」としてはどんなサポートをすればよいのでしょうか。

石原さんが行ったことは順に
①ネットワーク構築(情報共有の仕組みづくり)
・情報共有会議の仕組みづくり。団体ごとにどこで何をしているかを発表してもらっても、情報としては整理されないので、避難所ごと、エリアごとなどでそこに支援に入っている団体等から発表してもらい、場所ごとの全体像を把握することで、そこに何が足りていないかを明らかにしやすくなります。
・情報共有会議を毎日開催するのも大変なので、顔を合わせなくても随時情報共有できるようにオンラインコミュニティの立ち上げ。ここにこんな資源が足りない、とか、こんなことをしたらどうだろうかという提案などが書き込まれ、解決策などを持っている人がやり取りできるようなプラットフォームがあることで、ニーズへの対応がスムーズに。
②資源仲介(ヒト、モノ、カネ)
支援拠点や在宅避難者などが必要とする物資を必要な分だけ寄付を募れるようなWEB上の仕組みをリリースしたり、コミュニティ財団の仕組みをつかって災害用の基金を立ち上げて寄付を募り、即応性の高い活動にスピーディーに資金交付できる仕組みをつくったり、活動団体自身で寄付集めができるようなプラットフォームを構築して、必要な資源が得られやすいようにサポート
③情報発信
 活動をしたいと思っている人にとって必要な情報を、特定の誰かではなく、チームとして情報発信できるような仕組みづくりをしたり、被災者の方に有用な情報が集まっているサイトを構築するなどして、どちらにとっても必要な情報を得られやすいようにサポート。
④拠点確保
 長期で支援に入る方が活動しやすいよう、拠点を確保。
⑤把握調査
 全体を見て支援に抜け漏れがないかを確認し、必要なところに支援がいきわたるように調整して行く。

とのことですが、ここで大事なのは「情報」の交通整理。必要な人に必要な情報を届けていくことで、ニーズと支援が結びつくような流れを「特定の超人的な誰か」ではなく、「仕組み」として構築していくことの重要性がよくわかります。
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実際には、具体的にどんなサービスを使うと効率的かといったことも話していただき、参加者の方からは参考になったというコメントも。

ネットワークについても、自組織だけですべてを解決できるわけではないからこそ、「ここは得意だけど、ここは得意ではないから一緒にやっていきましょう」ということをいかに周囲に伝えていけるか。それがまさに協働の第一歩であるということを改めて学んだ場になりました。

例えば避難所でずっと同じパンばかり食べている方に、たまには違うものを食べられたらと発信すると、地元の和菓子屋さんがお饅頭を提供してくれる。こういう関係は、日常から顔が見えているからこそできることでもあり、平時のつながりこそが災害時にも生きることは言うまでもありません。
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災害支援の基金をつくって寄付を募ったときも、もともと2012年にみんなでつくる財団おかやまを立ち上げた際の支援者の方が多く寄付してくださったり、その方々が積極的に寄付を呼び掛けてくれていたことが他県に比べて多くの寄付が集まった要因のひとつではないかとのことでした。

一方で、石原さんは大事なのは「覚悟」であるとも言います。横並びのネットワークでは、いざボールが飛んできたときにお互いに顔を見合わせている間にボールが落ちてしまうこともある。「自分がとります!」と踏み込んでボールを取りに行く覚悟、中間支援を担う私たちも肝に銘じたいと思います。

少子高齢化、人口減少、産業構造の変化などにより、日本の地域コミュニティの形は大きく変化してきています。地域性だけではなく、自分たちのまちは自分たちでよくしていく、一方的なサービスの受け手ではなく、自分たちも主体的に参画していく「市民性」を高めていく、それを石原さんは「広い共助」という概念で整理されていました。
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石原さんが代表を務める岡山NPOセンターのスローガンも、見直しを図り、「豊かな市民社会の実現により、まちの中で起きた課題をまち自ら解決していける持続可能で自然治癒力の高いまちの実現を目指す」と変更したとのこと。自然治癒力の高いまち、それはすなわち市民による「自治」力が高いまち。

災害発生時、もちろん公助の力も必要ですが、自分たちの自然治癒力でどこまで復旧、復興していけるかも大事な視点です。そのためには日常からの関与する当事者を増やしていくこと、そして中間支援である私たちの役割は、当事者が活動しやすいようにその基盤を整備していくことであると改めて考えさせられた時間になりました。

今回は初のオンライン配信限定開催となりましたが、「会場にはなかなか足を運べなかったけれど家で子どもにご飯を食べさせながら見ることができた」「その時間リアルタイムでは見られなかったけど、あとから見られるのがよい」などの反応も多数いただきました。
顔の見える関係性ももちろん大切ですが、私たちとしてはまちのさまざまな課題に触れる一歩目を届けていくことを大事にしていますので、今後もさまざまな形で皆さんに情報を届けることにチャレンジしていきたいと思います。

新型コロナウィルス感染拡大防止のため、3月のフミコムcafeもオンライン配信での開催予定です。
次回は、医療的ケア児の育ちを地域でどう支えるかというテーマです。ぜひご覧ください!
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今回はオンライン配信をもとにグラフィックレコーディングに取り組んでくださった方が。金谷さん、ありがとうございます!
このように、グラフィックレコーディングという形で社会貢献してくださる方の参画も引き続き募集しております!