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地域連携ステーション フミコム

活動報告・発行広報物

【開催報告】フミコム朝活「ストレスマネジメントとファシリテーション」

地域連携ステーション フミコム
  • 文京区全域
  • 福祉・健康(高齢者/障害者/その他)
  • まちづくり・安全
  • 職業・暮らし
日 時:6月6日、13日(土)9:30~12:00 
会 場:オンライン(zoom開催)
講 師:田中 純さん
(一般社団法人コミュニティ・カウンセラー・ネットワーク代表理事)
参加者:のべ46人(6/6:25人、6/13:21人 ※講座スタッフ含む)

新型コロナウィルス感染拡大の影響で外出自粛などが続いた4月~5月、これまでと違う生活スタイルを余儀なくされ、無意識のうちにストレスが溜まっているという人も少なくないのではないでしょうか?
この講座では不安やストレスが発生するメカニズム、それをどうマネジメントするかのヒントを得た上で、コミュニケーションを円滑にし、人の成長を促すファシリテーションを学んで、日常生活や地域活動に役立ててもらえたら、との思いから開催しました。
<1日目>
講座の最初はアイスブレイクから。大人数でも双方向性を感じられるようなワークということで、オンラインでのネームトスに挑戦してみました。

さて、コロナ禍で先が見えない、対処法もよくわからない不安を抱えている方も少なくないと思いますが、講座の最初には「不安」と「心配」の違いについて講義がありました。
なんだかよくわからない、モヤモヤしているのが「不安」であり、正体が見えた上でのおそれが「心配」。となるとまさに今私たちが抱えているのは「不安」という状況になります。

そんな「不安」を必要以上に大きくしないのがこの講座の目的のひとつである「ストレスマネジメント」ということになります。

では、ストレスとは何でしょうか?
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例えば、帆船は、帆が風を受けるからこそ前に進んでいきます。この場合は風がストレス要素で、帆がストレスを受け止めるものになりますが、このようにストレスは必ずしも悪い意味合いだけではなく、何かを推進する力にもなりえます。風をうまく扱って行きたい方向に行けるようにすることと同時に、風の扱い方を誤って船を壊してしまわないようにという二つの側面がストレスマネジメントの極意です。
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ストレスマネジメントの極意は「ゴジラはリスさ」。
すなわち
「ゴ」合理的に考える
「ジ」自分のことは自分でする
「ラ」ライフスタイルを改善する
「は」発散し、表現し、楽しむこと
「リ」リラックス
「ス」スキルを磨く
「さ」サポートを動員・活用すること

「合理的に考える」とは、すなわち分別して考えること。
 部分と全体、変えられることと変えられないこと、自分のことと他者のことなど、わかっていてもここがなかなか分別できないこと、多いのではないでしょうか?

 このコロナ禍でも起こりうる脅威として、日本赤十字社が「ウィルスの次にやってくるもの」として啓発動画を公開していますが、ここにもストレスマネジメントの極意がちりばめられています。

 https://www.youtube.com/watch?v=rbNuikVDrN4
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「自分のことは自分でする」。これも当たり前のことのように思われますが、分別思考と同じように、これは自分のことなのか、相手のことなのかを区別することが大切です。
同時に、自分の状態やものの見方を認識すること、なぜそのように見えるのか背景にある感情を把握することで、自分自身に対して冷静さを取り戻すことができるかもしれません。

また、「発散」も大事な要素。コロナ禍によって、外出を自粛し、他者とコミュニケーションをとる頻度が減っていませんか?

自分自身の本音に耳を傾け認めること、もしくは適切な相手に話していくこと。この機会が減ってしまったことで知らぬ間にストレスが溜まってしまっていることも。

「聞かれ上手」になるためのポイントとしては、①最後まで口を挟まない、②とりあえず否定しない、③自分の言いたいことは後回し

中身がたくさんの容器にものを新たに入れるには、まずは中のものを出してからでないとあふれてしまうのと同じことだと学びました。

ひととおりのストレスマネジメントの概要を学んだあと、「流れ星」のワークに挑戦しました。

講師が読み上げたストーリーに基づいて各自が白い紙に絵で表現していきます。
最初から最後までの筋書きがわかっているわけではなく、その時々講師が口にした情景をそれぞれが絵にしていくので出来上がった作品は二つとして同じものはありません。
個人ワークが終わった後は、グループにわかれて、各自描いたものを見せ合いながら、ワークをやってみた感想などを共有し、1日目の講座は終了しました。
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<2日目>
2日目も初回同様、ネームトスのワークから開始しました。お互いに少し顔もわかってきた中でのワークなので、ちょっとしたミスがあってもサポートし合うなど、まさに前回の学びが活かされるような一幕も。

また、いろんな「はぁ」を言ってみるワークも行いました。同じ言葉でも、ため息なのか、驚きなのか、感心なのかで表現は全然違います。

さて、講義の初めは前回の振り返りから。
・全体の話が分からなかったから構図をつかみにくかった
・話の受け止め方によって皆表現が全然違うということがわかった
・当然こうすべきだ、こうなるだろうみたいな先入観があることに気づいた
などの感想が聞かれましたが、

「全体」「多様性」「先入観」というのはストレスマネジメントの上でも、また本講座の柱のひとつでもある「ファシリテーションでも重要になってきます」。

全体像が見えない、見通しが立たないと「不安」を感じる、というのはストレスの発生するメカニズムとして1日目に話がありましたが、「ファシリテーター」としては、その場の目的として、あえて全体像を伝えるのか、伝えないのかというのも大事な視点になってきます。
例えば「学び」が目的の場であるならば、あえて全体像を伝えないということもあるでしょうし、「目的に向かって行動を推進していく」ということであれば、随時伝えていくことが求められるかもしれません。

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ここで頭の体操のようなワークを実施しました。
各自で正解を考えた後にグループになって全員が回答できるように知恵を出し合いましたが、「人に正解を聞いていいんだろうか?」「自分は答えを知っているけどすぐに人に教えてしまっていいんだろうか」と考えた人も少なくないようです。
ここには「問題は自分で解かなくてはいけない」という先入観があると言えます。
知らず知らずのうちに自分たちを縛っている「先入観」にはどんなものがあるだろうか、と考えてみるのは大事なことです。

ファシリテーターは「見通し」「見透し」「見当」が重要だと講師の田中さんは話します。
全体像を把握したうえで、相手がどういうことを考えているか、行動するだろうかと見透すこと。
一方で、見透かされるというのは自分に置き換えると気分のいいものではないかもしれないのでマスクをつけて防御をするかもしれない。
その防御を取り外すには「この相手なら安全だ、安心だ」と思えることが大切です。
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ファシリテーターとは、「つながりをつくる、協働の場を整える」役割だとも言われますが、
そもそもファシリテーションとは、「容易にすること、簡易化、促進」という意味があります。
その意味では、ファシリテーターとは「人々の活動が容易にできるよう支援し、うまくことが運ぶよう舵取りすること」すなわち、安心してチャレンジする、前に踏み出せるような環境を整えること、ということもできるのではないでしょうか?

何もないところに踏み出す時に必要なのは「希望」。
同時に、いまある足場が安心・安全な居場所であれること。
そのような希望や環境を与えられるような存在でいられるかどうかという視点で講義は進みました。
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ファシリテーターの機能として求められるもののうち、「協働の場を整える」ワークとして、規範(約束ごと)をつくるグループワークを行いました。

家のイラストを描いた上で、家内(コミュニティ内)安全のために、私たちが大切にしたいものを家の中に、排除したいことを家の外に各自で書き出したのちに、グループでシェアをしました。

「STAY HOME」を実践するには、HOMEが安心・安全な場所でなくてはそこに居ることがしんどくなります。そのためにも「家内安全」はとても大事な概念であると言えます。
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最後に講師から、家内安全を達成するための「あたりまえ」を教えてもらいました。
「あ」あるがまま
「た」多様性の尊重
「り」領分の尊重、リラックス
「ま」守られている実感
「え」「援」の容易な獲得
これらを高めていくのは何も専門職のカウンセラーでなくてもできること、受講生の皆さんがそれぞれ所属する様々なコミュニティが安全・安心の場であれるように取り組めることのヒントをたくさん得られた講座となりました。

開催後のアンケートでは、
・どうしようもないことをどうしようと悩まないようにしたいと思います。
・ストレスを抱えるのは、生きている証拠です。いかに客観視できるかを、トレーニングしたいです。
・「ゴジラはリスさ」という合言葉を他の人に伝えたいです。自分や大切な人が不安で気持ちがいっぱいになったときに、その言葉を思い出して心を整えていきたいです。
・「家内安全」について話し合っているとき、家の外に出したいものに「排除」「暴力」がありました。ステイホームが推奨されていますが、虐待などで「家にいること」が恐怖である人もたくさんいて、「ステイホーム」という言葉で傷つく人もたくさんいるのではないかと思いました。ちなみに、グループの話し合いのなかで「外に出したいものには漢字(難しいことば)が多い」という意見がありました。難しい言葉を使うのは子供ではなく大人、大人が子供を傷つけてはいけないと思いました。

といった声が聞かれました。
まずは自分が自分の状態を認識すること、そして学びを身近な人にも共有していくことで、安心・安全な場が地域に広がっていくことを主催者の私たちも願っています。

なお、自分の状態に気付く、自分のサポートの状況を知るワークシートとして講師が開発した「これでどうにかなりマンダラ」は以下のリンクから入手できますので、皆さんも試してみてはいかがでしょうか?
http://www.mikuni-webshop.com/html/page135.html

今後も、家庭や学校や職場でも役に立ち、コミュニティでの活動やNPOの活動でも役に立つようなスキルを身につけられるような講座をフミコムとしても企画していきたいと思います。