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地域連携ステーション フミコム

活動報告・発行広報物

【開催報告】\今だから考えたい/オンラインで"居場所"はつくれるのか?

地域連携ステーション フミコム
  • 文京区全域
  • 福祉・健康(高齢者/障害者/その他)
  • 子ども
  • その他
日 時:2021年2月13日(土)14:00~17:00
会 場:ZOOMオンライン
講 師:呉 哲煥さん(NPO法人CRファクトリー代表理事)
参加者:19名(他グラフィックレコーディング1名)

新型コロナウイルスの影響により社会全体でオンライン化が進むなか、居場所などの地域活動・市民活動においては、活動そのものがオンラインになじみにくいなど、「リアルな場とは何かが違う、何かが足りない…」と、悩む方もいらっしゃるかと思います。
そもそも”居場所”とはなにか、を考えてみると、その答えは活動団体それぞれが元々持っている「目指したいこと」によって異なるものですが、その「誰に・どうなってもらえるといいのか」の部分を振り返る機会はあまりないのではないでしょうか?
今回は、そんなコロナ禍におけるモヤモヤを他の活動団体と共有しながら、改めて自分たちの活動の目的・ビジョンを見つめ直した上で、コロナ時代において自分たちの活動にはどんな手法が有効なのかを考えることができるような機会をつくりたいと考え、開催に至りました。
そんな講座に参加しようと思ってくださった方から、参加前のアンケートでこんな声が寄せられました。
●オンラインでの活動・運営に関しての悩み・モヤモヤについて●
・遠方の人なども参加できるようになった一方で、オンラインが好きでない人の参加がなくなり、このギャップを埋めるにはどうしたらいいか。
・オンラインとオフラインを同時にするとオフラインだけ盛り上がってオンラインの人が置いていかれるということが起こりがち。
・新規の人が参加しにくいと感じる。
・オンラインだと気軽に集える半面、「ねぇちょっとちょっと」みたいな気軽に聞ける雰囲気を出すのが難しい。

・・・同じようなモヤモヤ・悩みを抱く方も、多いのではないでしょうか。
今回の講座は、講師の呉さんからのお話をふまえながら、参加者同士でモヤモヤ・悩みを共有したりアイデアを出し合うなどのグループワークを中心に進んでいきました。
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まずは、アイスブレイクとしてZoomのチャット機能などをみんなで試します。オンラインではどうしても一体感に欠けてしまうのもモヤモヤの一つですが、呉さんの進行からオンラインでの場の進め方も学ぶことができました。

参加者のみなさんから本日の意気込みをチャットで伺ったところで、本講座の背景として、CRファクトリーの考え方についてご紹介いただきました。

そもそも日本は社会課題先進国。自殺者数やうつ病になる人の数、孤独死の件数も、他国に比べて高い数値となっています。
こうした社会課題がなくならないのは、つながりの希薄化、コミュニティの弱体化などの社会構造に原因があると話され、CRファクトリーでは、その解決策として「人と人のつながりをつくる」「愛着あるコミュニティを増やす」ことへのアプローチが大切であると考えているとのことです。
だからこそ「人との出会い」や「つながり・居場所」をつくる活動を行う市民活動団体や地域活動団体の取り組みが大切なのだと呉さんは言います。

ただし、今は活動団体にとっては逆風のような状況。そのような中で、リアルとオンラインの両方を駆使しながらどのようにして「参加」や「居場所」を作っていくかを、一緒に考えていきたいと話されました。
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ここから本題に入ります。
前述したように、今は逆風の中。リアルのイベントやミーティングが開催しづらくなるなど、特にイベント・場づくり・交流などを主活動とする団体にとっては活動をおこないにくい状況です。
その他にも、高齢者の感染に気をつける必要があったり、ITの得意・苦手の差があるなど、活動を再開するにも不安が多い状況です。

CRファクトリーでも、150以上の地域活動団体に向けて緊急調査アンケート(※)を実施した結果、「日常会話など、普段のなにげない雑談が減っている」「対話、議論、ディスカッションが深まらない」などが挙げられました。
(※CRファクトリーのアンケート結果はこちらからご覧いただけます。
 ⇒ https://crfactory.com/intermediary/page-8195/ )

こうした「気晴らし」や「ぬくもり」の減少により、コロナ前はあまり意識していなかったおしゃべりや雑談の重要性や、五感(例えばにおいや美味しさ)を共有することの重要性に、社会全体が気づいてきました。「ねえねえちょっと」と、ふらっと、何気なく、ついでに話すような、予定していないコミュニケーションに価値があることを、コロナ禍だからこそ再確認できたように思います。
ここまでのお話を受けて、コロナ時代における活動の課題や悩みや難しさにはどのようなものがあるか、個人で考えたのち、グループごとに共有しました。

<各グループで出た意見(一部抜粋)>
・家という空間に仕事を持ち込む
・いろんな背景・価値観を持っている人が集まった時に軋轢が生まれる
・オンラインはニュアンスが伝えにくい
・会ってホッとする機会が少ない
・ふらっと来る、がオンラインではできにくい
・高齢者に対してのITリテラシーに対しての場の提供
・オンラインについていけない人にどう寄り添うか
・文字での打ち込みなどでのコミュニケーションが得意な方、話過ぎてしまう方、逆にコミュニケーションがとりやすくなることも
・「知っている」ことによっての格差がより生まれやすくなっている スタートラインを合わせることに時間がかかる
・自由に話す、自由につながるをオンライン上でデザインすること

では、このモヤモヤの原因はなんでしょうか?それはもしかしたら、そもそもの団体の活動の目的にある「本来目指したいこと」との乖離が生じているからかもしれません。
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ここからの後半では、その「そもそも自分達は何を目指していたのか」を改めて見つめ直す時間です。事業やイベントを行うこと自体が目的ではなく、「誰に、どうなってもらえる」といいのか。
事前に用意されたワークシートを元に個人ワークをした後、個人ワークの後は、グループにわかれて共有しました。
参加者からは、文字として明文化し、言葉として発表することで、「改めてここが自分たちの活動のゴールだったんだ、と再確認することができた」との声が寄せられました。

グループワーク後、呉さんは、今までどおりの活動の延長線上ではできないことが今この時代は増えている、だからこそ、本来の活動の目的や根っこ・原点・源流に立ち返り、”この目的を叶える手段は何か”を貪欲に探っていってほしい、と話されました。
そうして探した先にある手段が、もしかしたらコロナ前とは違うものかもしれません。しかし、これからのWITHコロナ時代においては手段ありきでなく、「この人にこうなってほしい」の部分を叶えるためであれば、リアルに限らない手段・方法の選択肢を広げていくことが必要なのではないでしょうか。
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ここからは、今後の活動手段を考えていくためのヒントとして、リアルとオンラインそれぞれの特徴についてお話をしていただきました。

ここ1年の間に急速に普及したオンライン。
オンラインのモヤモヤについては前段で共有しましたが、ネガティブなことばかりでなく「つながる・集まる手段の選択肢が増えた」と捉えることもできます。

例えば、報告や情報共有系の会議や、知識・講義中心のセミナーは移動する必要がなく、また録画機能により共有のしやすいオンラインが有効であり、理念・ビジョンの共有などみんなと心を一つにするような共通認識づくりや、モチベーションを保つことにおいてはリアルな場が有効です。

このように、これからはオンラインとリアルの両方を使い分ける「ハイブリッド運営」を目指していけるといいと呉さんは言います。要所要所でリアル・対面の場をつくり、組織の温度を上げていきながら、必要時にはオンラインに切り替えできるような運営を、今だからこそ考えていく必要があるかもしれません。
ここからはまたグループワークです。オンライン化に向けて取り組んでいること・工夫していることについてグループで共有しました。
グループワークでは、これからオンラインを活用していこうと検討している方や、実際にオンラインイベントを開催したことのある方など活動状況がさまざまであったこともあり、参加者同士でおすすめのツールや工夫したことを共有するなど、学び合いながら進めていたことがとても印象的でした。
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グループワーク後、呉さんからオンラインミーティングのキーポイントについてお話していただきました。
・少人数・1対1・個別
 zoomなどのオンラインツールは大人数でのコミュニケーションに向いていないため、少人数や個別で「温度」や「関係性」をあたためることがカギとなります。リアルにおいても、初めての場所にいきなり入れられてもなかなか馴染みにくいものです。特にこのコロナ時代においては、「ふらっと」「偶然に」知り合うことが難しいからこそ、1対1など個別のつながりをつくってから少人数の会議を実施するなど、段階をつくることが大事であるとのことです。

・短い時間で頻度高く
 場所を移動する必要がないオンラインだからこそ、隙間時間などに実施がしやすいため、短い時間でのミーティングや面談を頻度高く行うことがポイントとなります。

・オンライン化支援・ITツールの手ほどき
 特にITツールへの抵抗感がある方にとっては、オンライン会議等の利用はハードルが高くなるため、信頼感のある人からの「個別でリアルな手ほどき」がポイントになります。
本編は以上ですが、終了後、参加者の方から質問が寄せられ、より深いところまでお話が広がり有意義な時間となりました。
また、今回も講座の様子をグラフィックレコーディングしてくださいましたのでご紹介します。
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いまだ長引くコロナ禍ですが、誰もが経験したことのない事態だからこそみんなで悩みや不安を共有しながら、改めて自分たちの活動の本質の部分を「棚卸し」する時間が大切であると、本講座を通して実感しました。
フミコムでも、地域で活動する中でのお困りごとや悩みについて一緒に考えていくこともできますので、ぜひお気軽にご相談いただければと思います。

2021年度も、みなさまからの声を参考にさまざまな講座を開催していきます。「ちょっとフミコんでみようかな」と思った方はどうぞお気軽にご参加ください。